1912ページ
ぬ。なさけなかりける無常かな、無常かな。
かかるなさけなき国をばいといすてさせ給いて、故五郎殿の御信用ありし法華経につかせ給いて、常住不壊のりょう山浄土へまいらせさせ給え。ちちは、りょうぜんにまします。母は娑婆にとどまれり。二人の中間におわします故五郎殿の心こそおもいやられて、あわれにおぼえ候え。事多しと申せども、とどめ候い了わんぬ。恐々謹言。
十月二十四日 日蓮 花押
上野殿母尼御前御返事
(335)
上野尼御前御返事(烏竜遺竜の事)
弘安3年(ʼ80)11月15日 59歳 上野尼
麞牙一駄四斗定・あらいいも一俵、送り給びて、南無妙法蓮華経と唱えまいらせ候い了わんぬ。
妙法蓮華経と申すは、蓮に譬えられて候。天上には摩訶曼陀羅華、人間には桜の花、これらはめでたき花なれども、これらの花をば法華経の譬えには仏取り給うことなし。一切の花の中に、取り分けてこの花を法華経に譬えさせ給うことは、その故候なり。あるいは前花後菓と申して、花は前に菓
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
---|---|---|---|
(334)上野殿母御前御返事(四十九日菩提の事) | 弘安3年(’80)10月24日 | 59歳 | 上野尼 |
(335)上野尼御前御返事(烏竜遺竜の事) | 弘安3年(’80)11月15日 | 59歳 | 上野尼 |