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五人所破抄
夫れ以んみれば、諸仏懸遠の難きことは譬えを曇華に仮り、妙法値遇の縁は比いを浮き木に類す。塵数三・五の施化になお漏れて、正像二千の弘経もやや過ぎ已わんぬ。闘諍堅固の今は、乗・戒ともに緩くして、人には弊悪の機のみ多し。何の依憑しきもの有らんや。たとい、内外兼包の智は三祇に積み、大小薫習の行は百劫を満つとも、時機を弁ぜず本迹に迷倒せば、それまた信じ難からん。
ここに、先師聖人、親しく大聖の付を受けて末法の主たりといえども、早く無常の相を表して円寂に帰入するの剋み、五字を紹継するがために六人の遺弟を定めたもう。
日昭と日朗と日興と日向と日頂と日持と、已上六人なり。
五人、武家に捧ぐる状に云わく〈いまだ公家に奏せず〉、
「天台沙門・日昭、謹んで言上す。
先師・日蓮は、忝くも法華の行者となり専ら仏果の直道を顕し、天台の余流を酌み、地慮の研精を尽くす」云々。
また云わく「日昭、不肖の身たりといえども、兵戈永息のため、副将安全の奉為に、法華の道場を構え長日の勤行を致す。すでに冥々の志有り。あに照々の感無からんや」〈詮を取る〉。
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(455)五人所破抄 |