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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

候大悪にてこそ候いぬれ。彼は、王一人の悪心、大臣以下は心より起こることなし。また権仏と権経との敵なり。僧も法華経の行者にはあらず。これは、一向に法華経の敵、王一人のみならず、一国の智人ならびに万民等の心より起これる大悪心なり。
 譬えば、女人物をねためば、胸の内に大火もゆる故に、身変じて赤く、身の毛さかさまにたち、五体ふるい、面に炎あがり、かおは朱をさしたるがごとし。眼まろになりて、ねこの眼のねずみをみるがごとし。手わななきて、かしわの葉を風の吹くに似たり。かたわらの人これを見れば、大鬼神に異ならず。日本国の国主・諸僧・比丘・比丘尼等もまたかくのごとし。たのむところの弥陀念仏をば日蓮が無間地獄の業と云うを聞き、真言は亡国の法と云うを聞き、持斎は天魔の所為と云うを聞いて、念珠をくりながら歯をくいちがえ、鈴をふるにくびおどりおり、戒を持ちながら悪心をいだく。極楽寺の生き仏の良観聖人、折り紙をささげて上へ訴え、建長寺の道隆聖人は輿に乗って奉行人にひざまずく。諸の五百戒の尼御前等は、はくをつかいててんそうをなす。
 これひとえに、法華経を読んでよまず、聞いてきかず、善導・法然が「千の中に一りも無し」と、弘法・慈覚・達磨等の「皆これ戯論」「教外に別伝す」のあまきふる酒にえわせ給いて、さかぐるいにておわするなり。
 「法華は最も第一なり」の経文を見ながら、「大日経は法華経に勝れたり」「禅宗は最上の法なり」「律宗こそ貴けれ」「念仏こそ我らが分にはかないたれ」と申すは、酒に酔える人にあらずや。
 星を見て月にすぐれたり、石を見て金にまされり、東を見て西と云い、天を地と申す物ぐるいを本