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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

(399)

新池殿御消息

 弘安2年(ʼ79)5月2日 58歳 新池殿

 八木三石、送り給び候。
 今、一乗妙法蓮華経の御宝前に備え奉って、南無妙法蓮華経とただ一遍唱えまいらせ候い畢わんぬ。いとおしみの御子を霊山浄土へ、「決定して疑いあることなけん」と送りまいらせんがためなり。
 そもそも因果のことわりは華と果とのごとし。
 千里の野の枯れたる草に蛍火のごとくなる火を一つ付けぬれば、須臾に一草二草、十・百・千・万草につきわたりてもゆれば、十町二十町の草木一時にやけつきぬ。竜は一渧の水を手に入れて天に昇りぬれば、三千世界に雨をふらし候。小善なれども、法華経に供養しまいらせ給いぬれば、功徳かくのごとし。
 仏の滅後一百年と申せしに、月氏国に阿育大王と申せし王ましましき。一閻浮提八万四千の国を四分が一御知行ありき。竜王をしたがえ、鬼神を召し仕わせ給う。六万の羅漢を師として八万四千の石塔を立て、十万億の金を仏に供養し奉らんと誓わせ給いき。
 かかる大王にておわせしその因位の功徳をたずぬれば、ただ土の餅一つ釈迦仏に供養し奉りし故