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を弘通し候を、上一人より下万民に至るまで御あだみ候故に、一切の神を敬い一切の仏を御供養候えども、その功徳還って大悪となり、やいとの還って悪瘡となるがごとく、薬の還って毒となるがごとし。一切の仏神等に祈り給う御祈りは、還って科と成って、この国既に他国の財と成り候。また大いなる人々、皆、平家の亡びしが様に百千万億すぎての御歎きたるべきよし、兼ねてより人々に申し聞かせ候い畢わんぬ。
また法華経をあだむ人の科にあたる分斉をもって、還って功徳となる分斉をも知らせ給うべし。例せば、父母を殺す人は、いかなる大善根をなせども、天これを受け給うことなし。また法華経のかたきとなる人をば、父母なれども殺しぬれば、大罪還って大善根となり候。たとい十方三世の諸仏の怨敵なれども、法華経の一句を信じぬれば、諸仏捨て給うことなし。これをもって推せさせ給え。御使いいそぎ候えば、委しくは申さず候。またまた申すべく候。恐々謹言。
八月二十二日 日蓮 花押
治部房御返事
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(388)治部房御返事 | 弘安4年(’81)8月22日 | 60歳 | 治部房 |