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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

に法華経を御信用有って、仏にならせ給いしぞかし。これもさにてや候らん。あやしく覚え候。
 甲斐公が語りしは「常の人よりもみめ形も勝れて候いし上、心も直くて智慧賢く、何事につけてもゆゆしかりし人の疾くはかなく成りしことの哀れさよと思い候いしが、またつらつら思えば、この子なき故に、母も道心者となり父も後世者に成って候は、ただとも覚え候わぬに、また皆人の悪み候法華経に付かせ給えば、ひとえにこれ、なき人の二人の御身に添って勧め進らせられ候にや」と申せしが、さもやと覚え候。
 前々はただあらましのことかと思って候えば、これほど御志の深く候いけることは始めて知って候。また、もしやのこと候わば、くらき闇に月の出ずるがごとく、妙法蓮華経の五字、月と露れさせ給うべし。その月の中には、釈迦仏・十方の諸仏、乃至前に立たせ給いし御子息の露れさせ給うべしと思しめせ。委しくはまたまた申すべし。恐々謹言。
  七月七日    日蓮 花押