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められ、堪えがたさに、隠れて他国に行って、その国の大王に宮仕えけるほどに、きりものに成って関白と成りぬ。後にその国を力として、我が本の主の国を打ち取りぬ。その時、本の主、この関白を見て大いに怖れ、前に悪しく当たりぬるを悔いかえして宮仕え、様々の財を引きける。前に負けぬる物のことは思いもよらず、今はただ命のいきんことをはげむ。
法華経もまたかくのごとく、法華経は東方の薬師仏の主、南方・西方・北方・上下の一切の仏の主なり。釈迦仏等の仏の法華経の文字を敬い給うことは、民の王を恐れ、星の月を敬うがごとし。しかるに、我ら衆生は、第六天の魔王の相伝の者、地獄・餓鬼・畜生等に押し籠められて気もつかず朝夕獄卒を付けて責むるほどに、とかくして法華経に懸かり付きぬれば、釈迦仏等の十方の仏の御子とせさせ給えば、梵王・帝釈だにも恐れて寄り付かず。いかにいわんや、第六天の魔王をや。魔王は前には主なりしかども、今は敬い畏れて、「あしゅうせば、法華経・十方の諸仏の御見参に、あしゅうや入らんずらん」と恐れ畏みて供養をなすなり。いかにしても、六道の一切衆生をば法華経へつけじとはげむなり。
しかるに、いかなることにやおわすらん、皆人の憎み候日蓮を不便とおぼして、かく遥々と山中へ種々の物送りたび候こと、一度二度ならず。ただごとにあらず、ひとえに釈迦仏の入り替わらせ給えるか。またおくれさせ給いける御君達の、御仏にならせ給いて、父母を導かんために御心に入り替わらせ給えるか。
妙荘厳王と申せし王は、悪王なりしかども、御太子、浄蔵・浄眼の導かせ給いしかば、父母二人共
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(383)浄蔵浄眼御消息 | 建治・弘安期 | 松野殿夫妻 |