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り。このこと、最大事なりしかば、弟子等にもかたらず、ただいつわりおろかにて念仏と禅等ばかりをそしりてきかせしなり。今はまた用いられぬことなれば、身命もおしまず弟子どもにも申すなり。こう申せば、いよいよ御不審あるべし。日蓮いかにいみじく尊くとも、慈覚・弘法にすぐるべきか。この疑いすべてはるべからず。いかにとかすべき。
ただし、皆人はにくみ候に、すこしも御信用のありし上、これまでも御たずねの候は、ただ今生ばかりの御事にはよも候わじ。定めて過去のゆえか。
御所労の大事にならせ給いて候なること、あさましく候。ただし、つるぎはかたきのため、薬は病のため。阿闍世王は父をころし、仏の敵となれり。悪瘡身に出でて後、仏に帰伏し法華経を持ちしかば、悪瘡も平癒し寿をも四十年のべたりき。しかも法華経は「閻浮提の人の病の良薬なり」とこそとかれて候え。閻浮の内の人は病の身なり。法華経の薬あり。
三事すでに相応しぬ。一身いかでかたすからざるべき。ただし、御疑いの御わたり候わんをば、力及ばず。南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経。
七月十二日 日蓮 花押
御返事
覚乗房・はわき房に度々よませて、きこしめせ、きこしめせ。
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(359)高橋入道殿御返事 | 建治元年(’75)7月12日 | 54歳 | 高橋六郎兵衛 |