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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

(359)

高橋入道殿御返事

 建治元年(ʼ75)7月12日 54歳 高橋六郎兵衛

 進上 高橋入道殿御返事    日蓮

 我らが慈父・大覚世尊は、人寿百歳の時、中天竺に出現しましまして、一切衆生のために一代聖教をとき給う。仏在世の一切衆生は、過去の宿習有って仏に縁あつかりしかば、すでに得道成りぬ。「我が滅後の衆生をばいかんがせん」となげき給いしかば、八万聖教を文字となして、一代聖教の中に小乗経をば迦葉尊者にゆずり、大乗経ならびに法華経・涅槃等をば文殊師利菩薩にゆずり給う。ただし、八万聖教の肝心・法華経の眼目たる妙法蓮華経の五字をば、迦葉・阿難等にもゆずり給わず、また文殊・普賢・観音・弥勒・地蔵・竜樹等の大菩薩にもさずけ給わず。これらの大菩薩等ののぞみ申せしかども、仏ゆるし給わず。大地の底より上行菩薩と申せし老人を召しいだして、多宝仏・十方の諸仏の御前にして、釈迦如来、七宝の塔中にして妙法蓮華経の五字を上行菩薩にゆずり給う。
 その故は、我が滅後の一切衆生は皆我が子なり。いずれも平等に不便におもうなり。しかれども、医師の習い、病に随って薬をさずくることなれば、我が滅後五百年が間は、迦葉・阿難等に、小乗経