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の薬をもって一切衆生にあたえよ。次の五百年が間は、文殊師利菩薩・弥勒菩薩・竜樹菩薩・天親菩薩等、華厳経・大日経・般若経等の薬を一切衆生にさずけよ。我が滅後一千年すぎて像法の時には、薬王菩薩・観世音菩薩等、法華経の題目を除いて余の法門の薬を一切衆生にさずけよ。末法に入りなば、迦葉・阿難等、文殊・弥勒菩薩等、薬王・観音等のゆずられしところの小乗経・大乗経ならびに法華経は、文字はありとも衆生の病の薬とはなるべからず。いわゆる、病は重し薬はあさし。その時、上行菩薩出現して、妙法蓮華経の五字を一閻浮提の一切衆生にさずくべし。
その時、一切衆生、この菩薩をかたきとせん。いわゆる、さるのいぬをみるがごとく、鬼神の人をあだむがごとく、過去の不軽菩薩の一切衆生にのりあだまれしのみならず杖木・瓦礫にせめられし、覚徳比丘が殺害に及ばれしがごとくなるべし。
その時は、迦葉・阿難等も、あるいは霊山にかくれ、恒河に没し、弥勒・文殊等も、あるいは兜率の内院に入り、あるいは香山に入らせ給い、観世音菩薩は西方にかえり、普賢菩薩は東方にかえらせ給う。諸経は、行ずる人はありとも、守護の人なければ、利生あるべからず。諸仏の名号は唱うるものありとも、天神これをかごすべからず。ただ、小牛の母をはなれ、金鳥のたかにあえるがごとくなるべし。その時、十方世界の大鬼神、一閻浮提に充満して、四衆の身に入り、あるいは父母をがいし、あるいは兄弟等を失わん。殊に国中の智者げなる持戒げなる僧尼の心にこの鬼神入って、国主ならびに臣下をたぼらかさん。この時、上行菩薩の御かびをかぼりて、法華経の題目・南無妙法蓮華経の五字ばかりを一切衆生にさずけば、彼の四衆等ならびに大僧等、この人をあだむこと、父母のかたき、
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(359)高橋入道殿御返事 | 建治元年(’75)7月12日 | 54歳 | 高橋六郎兵衛 |