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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

(353)

蒙古使御書

 建治元年(ʼ75)9月 54歳 西山殿

 鎌倉より事故なく御下りの由承り候いて、うれしさ申すばかりなし。
 また蒙古の人の頸を刎ねられ候こと承り候。日本国の敵にて候念仏・真言・禅・律等の法師は切られずして、科なき蒙古の使いの頸を刎ねられ候いけることこそ不便に候え。子細を知らざる人は、勘えあてて候を、おごりて云うと思うべし。この二十余年の間、私には昼夜に弟子等に歎き申し、公には度々申せしこと、これなり。
 一切の大事の中に国の亡ぶるが第一の大事にて候なり。最勝王経に云わく「害の中の極めて重きは、国位を失うに過ぎたるはなし」等云々。文の心は、一切の悪の中に、国王と成って政悪しくして我が国を他国に破らるるが第一の悪にて候と説かれて候。また、金光明経に云わく「悪人を愛敬し善人を治罰するに由るが故に乃至他方の怨賊来って、国人喪乱に遇わん」等云々。文の心は、国王と成って悪人を愛し善人を科にあつれば、必ずその国他国に破らるるという文なり。法華経第五に云わく「世の恭敬するところとなること、六通の羅漢のごとくならん」等云々。文の心は、法華経の敵の相貌を説いて候に、二百五十戒を堅く持ち、迦葉・舎利弗のごとくなる人を、国主これを尊んで、法