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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

(329)

上野殿御返事(孝不孝の事)

 弘安3年(ʼ80)3月8日 59歳 南条時光

 故上野殿御忌日の僧膳料、米一たわら、たしかに給び候い畢わんぬ。御仏に供しまいらせて、自我偈一巻よみまいらせ候べし。
 孝養と申すは、まず不孝を知って孝をしるべし。不孝と申すは、酉夢という者、父を打ちしかば、天雷身をさく。班婦と申せし者、母をのりしかば、毒蛇来ってのみき。阿闍世王、父をころせしかば、白癩病の人となりにき。波瑠璃王は親をころせしかば、河上に火出でて、現身に無間におちにき。他人をころしたるには、いまだかくのごとくの例なし。不孝をもって思うに、孝養の功徳のおおきなることもしられたり。
 外典三千余巻は他事なし。ただ父母の孝養ばかりなり。しかれども、現世をやしないて後生をたすけず。父母の恩のおもきことは、大海のごとし。現世をやしない後生をたすけざれば、一渧のごとし。
 内典五千余巻また他事なし。ただ孝養の功徳をとけるなり。しかれども、如来四十余年の説教は孝養ににたれども、その説いまだあらわれず。孝が中の不孝なるべし。