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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

(305)

上野殿御消息(四徳四恩の事)

 建治元年(ʼ75) 54歳 南条時光

 三世の諸仏の世に出でさせ給いても、皆々四恩を報ぜよと説き、三皇五帝、孔子・老子・顔回等の古の賢人は、四徳を修せよとなり。四徳とは、一には父母に孝あるべし、二には主に忠あるべし、三には友に合って礼あるべし、四には劣れるに逢って慈悲あれとなり。
 一に父母に孝あれとは、たとい親はものに覚えずとも、悪しざまなることを云うとも、いささかも腹も立てず、誤る顔を見せず、親の云うことに一分も違えず、親によき物を与えんと思って、せめてすることなくば、一日に二・三度えみて向かえとなり。
 二に主に合って忠あるべしとは、いささかも主にうしろめたなき心あるべからず。たとい我が身は失わるとも、主にはかまえてよかれと思うべし。「かくれての信あれば、あらわれての徳あるなり」と云々。
 三には友におうて礼あれとは、友達の一日に十度二十度来れる人なりとも、千里二千里来れる人のごとく思うて、礼儀いささかおろかに思うべからず。
 四に劣れる者に慈悲あれとは、我より劣りたらん人をば我が子のごとく思って、一切あわれみ、慈悲あるべし。これを四徳と云うなり。かくのごとく振る舞うを、賢人とも聖人とも云うべし。この