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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

(284)

波木井三郎殿御返事

 文永10年(ʼ73)8月3日 52歳 南部六郎三郎

 鳥跡飛び来れり。
 不審の晴るること、疾風の重雲を巻いて明月に向かうがごとし。ただし、この法門、当世の人、上下を論ぜず信心を取り難し。その故は、仏法を修行するは「現世安穏にして、後に善処に生ず」等云々。しかるに、日蓮法師、法華経の行者と称すといえども、留難多し。当に知るべし、仏意に叶わざるか等云々。
 ただし、この邪難は先案の内なり。御勘気を蒙るの後始めて驚怖すべきにあらず。その故は、法華経の文を見聞するに、末法に入って教えのごとく法華経を修行する者は留難多かるべきの由、経文赫々たり。眼有らん者はこれを見るか。
 いわゆる、法華経の第四に云わく「如来の現に在すすらなお怨嫉多し。いわんや滅度して後をや」。
 また五の巻に云わく「一切世間に怨多くして信じ難し」等云々。また云わく「諸の無智の人の、悪口・罵詈等し、刀杖・瓦礫を加うるもの有らん」等云々。また云わく「悪世の中の比丘」等云々。また云わく「あるいは阿練若に納衣にして空閑に在るもの有らん乃至白衣のために法を説いて、世の恭敬