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仏意の五重玄とは、諸仏の内証に五眼の体を具す。即ち妙法蓮華経の五字なり。仏眼は妙、法眼は法、慧眼は蓮、天眼は華、肉眼は経なり。妙は不思議に名づくるが故に真空冥寂の仏眼なり。法は分別に名づく。法眼は仮なり、分別の形なり。慧眼は空なり、果体の蓮なり。華は用なるが故に天眼に名づく。神通化用なり。経は破迷の義在り。迷をもって所対となすが故に肉眼と名づく。仏智の内証に五眼を具す。即ち五字なり。五字また五重玄なり。故に仏意の五重玄と名づく。また五眼即五智なり。法界体性智は仏眼、大円鏡智は法眼、平等性智は慧眼、妙観察智は天眼、成所作智は肉眼なり。
問う。一家には五智を立つや。
答う。既に九識を立つ。故に五智を立つべし。前の五識は成所作智、第六識は妙観察智、第七識は平等性智、第八識は大円鏡智、第九識は法界体性智なり。
次に機情の五重玄とは、機のために説くところの妙法蓮華経は即ちこれ機情の五重玄なり。首題の五字について五重の一心三観有り。
伝に云わく、
妙 不思議の一心三観 天真独朗の故に不思議なり。
法 円融の一心三観 理性円融なり。総じて九箇を成ず。
蓮 得意の一心三観 果位なり。
華 複疎の一心三観 本覚の修行なり。
経 易解の一心三観 教談なり。
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(281)十八円満抄 | 弘安3年(’80)11月3日 | 59歳 | 最蓮房 |