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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

 一、御状に「十七出家の後は、妻子を帯せず、肉を食せず」等云々。権教を信ぜし大謗法の時のことは、いかなる持戒の行人と申し候とも、法華経に背く謗法の罪の故に、正法の破戒の大俗よりも百千万倍劣り候なり。彼の謗法の比丘は、持戒なりといえども無間に堕つ。正法の大俗は、破戒なりといえども成仏疑いなき故なり。ただし、今の御身は念仏等の権教を捨てて正法に帰し給うが故に、誠に持戒の中の清浄の聖人なり。もっとも、比丘と成っては権宗の人すら、なおしかるべし。いわんや正法の行人をや。たとい権宗の時の妻子なりとも、かかる大難に遇わん時は、振り捨てて正法を弘通すべきのところに、地体よりの聖人、もっとも吉し、もっとも吉し。
 相構えて相構えて、向後も、夫妻等の寄り来るとも遠離して、一身に障礙無く、国中の謗法をせめて釈尊の化儀を資け奉るべきものなり。なおなお向後は、この一巻の書を誦して仏天に祈誓し、御弘通有るべく候。ただし、この書は弘通の志有らん人にとってのことなり。この経の行者なればとて、器用に能わざる者には、左右なくこれを授与すべからず候か。あなかしこ、あなかしこ。恐々謹言。
  文永十年癸酉正月二十八日    日蓮 花押
 最蓮房御返事