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とずれの夢の内に有るをゆめにて悦ぶがごとし。あわれ、あわれ、ふしぎなることかな。これも、かまくらも、この方の者はこの病にて死ぬる人はすくなく候。同船にて候えば、いずれもたすかるべしともおぼえず候いつるに、ふねやぶれてたすけぶねに値えるか。また竜神のたすけにて、事なく岸へつけるかとこそ不思議がり候え。
さわの入道のことなげくよし、尼ごぜんへ申しつたえさせ給え。ただし、入道のことは申し切り候いしかば、おもい合わせ給うらん。いかに念仏堂ありとも、阿弥陀仏は法華経のかたきをばたすけ給うべからず。かえりて阿弥陀仏の御かたきなり。後生、悪道に堕ちて、くいられ候らんことあさまし。
ただし、入道の堂のろうにて、いのちをたびたびたすけられたりしことこそ、いかにすべしともおぼえ候わね。学乗房をもって、はかにつねづね法華経をよませ給えとかたらせ給え。それも叶うべしとはおぼえず。さても尼のいかにたよりなかるらんとなげくと申しつたえさせ給い候え。またまた申すべし。
七月二十八日 日蓮 花押
佐渡国府の阿仏房尼御前
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(265)千日尼御前御返事(真実報恩経の事) | 弘安元年(’78)7月28日 | 57歳 | 千日尼 |