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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

文なり。
 この度、大願を立てて、後生を願わせ給え。少しも謗法不信のとが候わば、無間大城疑いなかるべし。譬えば、海上を船にのるに、船おろそかにあらざれども、あか入りぬれば、必ず船中の人々一時に死するなり。
 なわて堅固なれども、蟻の穴あれば、必ず終に湛えたる水のたまらざるがごとし。謗法不信のあかをとり、信心のなわてをかたむべきなり。浅き罪ならば、我よりゆるして功徳を得さすべし。重きあやまちならば、信心をはげまして消滅さすべし。
 尼御前の御身として、謗法の罪の浅深・軽重の義をとわせ給うこと、まことにありがたき女人にておわすなり。竜女にあにおとるべきや。「我は大乗の教えを闡いて、苦の衆生を度脱せん」とは、これなり。「その義趣を問えば、これは則ち難しとなす」といって、法華経の義理を問う人はかたしと説かれて候。
 相構えて相構えて、力あらんほどは謗法をばせめさせ給うべし。日蓮が義を助け給うこと、不思議に覚え候ぞ、不思議に覚え候ぞ。あなかしこ、あなかしこ。
  九月三日    日蓮 花押
 阿仏房尼御前御返事