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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

(251)

妙密上人御消息

 建治2年(ʼ76)閏3月5日 55歳 妙密

 青鳧五貫文、給び候い畢わんぬ。
 夫れ、五戒の始めは不殺生戒、六波羅蜜の始めは檀波羅蜜なり。十善戒・二百五十戒・十重禁戒等の一切の諸戒の始めは皆、不殺生戒なり。上大聖より下蚊虻に至るまで、命を財とせざるはなし。これを奪えば、また第一の重罪なり。如来、世に出で給いては、生をあわれむを本とす。生をあわれむしるしには、命を奪わず、施食を修するが、第一の戒にて候なり。
 人に食を施すに、三つの功徳あり。一には命をつぎ、二には色をまし、三には力を授く。命をつぐは、人中・天上に生まれては長命の果報を得、仏に成っては法身如来と顕れ、その身虚空と等し。力を授くる故に、人中・天上に生まれては威徳の人と成って眷属多し。仏に成っては報身如来と顕れて蓮華の台に居し、八月十五夜の月の晴天に出でたるがごとし。色をます故に、人中・天上に生まれては三十二相を具足して端正なること華のごとく、仏に成っては応身如来と顕れて釈迦仏のごとくなるべし。
 夫れ、須弥山の始めを尋ぬれば一塵なり。大海の初めは一露なり。一を重ぬれば二となり、二を重ぬれば三、乃至十・百・千・万・億・阿僧祇の母は、ただ一なるべし。