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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

(244)

妙一尼御前御消息(冬は必ず春となるの事)

 建治元年(ʼ75)5月 54歳 妙一尼

 妙一尼御前    日蓮

 夫れ、天に月なく日なくば、草木いかでか生ずべき。人に父母あり。一人もかけば、子息等そだちがたし。その上、過去の聖霊は、あるいは病子あり、あるいは女子あり。とどめおく母もかいがいしからず。たれにいいあずけてか冥途におもむき給いけん。
 大覚世尊、御涅槃の時、なげいてのたまわく「我涅槃すべし。ただ心にかかることは阿闍世王のみ」。迦葉童子菩薩、仏に申さく「仏は平等の慈悲なり。一切衆生のためにいのちを惜しみ給うべし。いかにかきわけて阿闍世王一人とおおせあるやらん」と問いまいらせしかば、その御返事に云わく「譬えば、一人にして七子有り。この七子の中に一子病に遇えり。父母の心平等ならざるにはあらざれども、しかも病子において心則ちひとえに多きがごとし」等云々。天台、摩訶止観にこの経文を釈して云わく「『譬えば、七子の父母平等ならざるにはあらざれども、しかも病者において心則ちひとえに重きがごとし』等云々とこそ仏は答えさせ給いしか」。文の心は、人にはあまたの子あれども、父母の心