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天の帝釈は、野干を敬って法を習いしかば、今の教主釈尊となり給い、雪山童子は、鬼を師とせしかば、今の三界の主となる。大聖・上人は形を賤しみて法を捨てざりけり。今、日蓮おろかなりとも、野干と鬼とに劣るべからず。当世の人いみじくとも、帝釈・雪山童子に勝るべからず。日蓮が身の賤しきについて巧言を捨てて候故に、国既に亡びんとするかなしさよ。また、日蓮を不便と申しぬる弟子どもをもたすけがたからんことこそ、なげかしくは覚え候え。
いかなることも出来し候わば、これへ御わたりあるべし。見奉らん。山中にて共にうえ死にし候わん。また乙御前こそおとなしくなりて候らめ。いかにさかしく候らん。またまた申すべし。
八月四日 日蓮 花押
乙御前へ
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(242)乙御前御消息 | 建治元年(’75)8月4日 | 54歳 | 日妙・乙御前 |