『日蓮大聖人御書全集　新版』全文検索

ならば、日月は東より出でさせ給わぬことはありとも、大地は反覆することはありとも、大海の潮はみちひぬことはありとも、破れたる石は合うとも、江河の水は大海に入らずとも、法華経を信じたる女人の世間の罪に引かれて悪道に堕つることはあるべからず。もし、法華経を信じたる女人、物をねたむ故、腹のあしきゆえ、貪欲の深きゆえなんどに引かれて悪道に堕つるならば、釈迦如来・多宝仏・十方の諸仏、無量曠劫よりこのかた持ち来り給える不妄語戒たちまちに破れて、調達が虚誑罪にも勝れ、瞿伽利が大妄語にも超えたらん。いかでか、しかるべきや。法華経を持つ人、憑もしく有りがたし。
　ただし、一生が間、一悪をも犯さず、五戒・八戒・十戒・十善戒・二百五十戒・五百戒・無量の戒を持ち、一切経をそらに浮かべ、一切の諸の仏菩薩を供養し、無量の善根をつませ給うとも、法華経ばかりを御信用なく、また御信用はありとも、諸経・諸仏にも並べて思しめし、また並べて思しめさずとも他の善根をば隙なく行じて時々法華経を行じ、法華経を用いざる謗法の念仏者なんどにも語らいをなし、法華経を「末代の機に叶わず」と申す者を科とも思しめさずば、一期の間行じさせ給うところの無量の善根もたちまちにうせ、ならびに法華経の御功徳もしばらく隠れさせ給いて、阿鼻大城に堕ちさせ給わんこと、雨の空にとどまらざるがごとく、峰の石の谷へころぶがごとしと思しめすべし。
　十悪五逆を造れる者なれども、法華経に背くことなければ、往生・成仏は疑いなきことに侍り。一切経をたもち諸の仏菩薩を信じたる持戒の人なれども、法華経を用いることなければ、悪道に堕つ