『日蓮大聖人御書全集　新版』全文検索

説いて云わく、「我滅度して後、後の五百歳の中、閻浮提に広宣流布せん」等云々。仏の滅後の多怨は、後の五百歳に妙法蓮華経の流布せん時と見えて候。次下にまた云わく「悪魔・魔民・諸天・竜・夜叉・鳩槃荼等」云々。行満座主、伝教大師を見て云わく「聖語朽ちず、今この人に遇えり。我が披閲するところの法門、日本国の阿闍梨に授与す」等云々。今もまたかくのごとし。末法の始めに妙法蓮華経の五字を流布して、日本国の一切衆生が仏の下種を懐妊すべき時なり。例せば、下女が王種を懐妊すれば、諸の女瞋りをなすがごとし。下賤の者に王頂の珠を授与せんに、大難来らざるべしや。「一切世間に怨多くして信じ難し」の経文これなり。
　涅槃経に云わく「聖人に難を致せば、他国よりその国を襲う」と云々。仁王経もまたまたかくのごとし〈取意〉。日蓮をせめて、いよいよ天地・四方より大災雨のごとくふり、泉のごとくわき、浪のごとく寄せ来るべし。国の大蝗虫たる諸僧等・近臣等が日蓮を讒訴する、いよいよ盛んならば、大難ますます来るべし。帝釈を射る修羅は、箭還って己が眼にたち、阿那婆達多竜を犯さんとする金翅鳥は、自ら火を出だして自身をやく。法華経を持つ行者は、帝釈・阿那婆達多竜に劣るべきや。
　章安大師云わく「仏法を壊乱するは、仏法の中の怨なり。慈無くして詐り親しむは、即ちこれ彼が怨なり」等云々。また云わく「彼がために悪を除くは、即ちこれ彼が親なり」等云々。日本国の一切衆生は、法然が捨閉閣抛と禅宗が教外別伝との誑言に誑かされて、一人もなく無間大城に堕つべしと勘えて、国主・万民を憚らず大音声を出だして二十余年が間よばわりつるは、竜逢・比干の直臣にも劣るべきや。大悲千手観音の一時に無間地獄の衆生を取り出だすに似たるか。火の中の数子を父母が