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つぎ、末代悪世の女人の成仏の手本と成り給うべし。かくのごとくおわさば、たといいかなることありとも、日蓮、二聖・二天・十羅刹・釈迦・多宝に申して、順次生に仏になしたてまつるべし。
「心の師とはなるとも、心を師とせざれ」とは六波羅蜜経の文なり。たといいかなるわずらわしきことありとも、夢になして、ただ法華経のことのみさばくらせ給うべし。
中にも日蓮が法門は古こそ信じがたかりしが、今は前々いいおきしこと既にあいぬれば、よしなく謗ぜし人々も悔ゆる心あるべし。
たといこれより後に信ずる男女ありとも、各々にはかえ思うべからず。始めは信じてありしかども、世間のおそろしさに、すつる人々かずをしらず。その中に、返って本より謗ずる人々よりも強盛にそしる人々またあまたあり。在世にも、善星比丘等は、始めは信じてありしかども、後にすつるのみならず、返って仏をぼうじ奉りしゆえに、仏も叶い給わず、無間地獄におちにき。
この御文は別してひょうえの志殿へまいらせ候。また大夫志殿の女房、兵衛志殿の女房によくよく申しきかせさせ給うべし、きかせさせ給うべし。南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経。
四月 日 日蓮 花押
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(171)兄弟抄 | 建治2年(’76)4月 | 55歳 | 池上宗仲・池上宗長 |