SOKAnetトップ

『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

(172)

兵衛志殿女房御書

 建治3年(ʼ77)3月2日 56歳 池上宗長の妻

 先度、仏器まいらせさせ給い候いしが、この度、この尼御前大事の御馬にのせさせ給いて候由、承り候。法にすぎて候御志かな。これは、殿はさることにて、女房のはからいか。
 昔、儒童菩薩と申せし菩薩は、五茎の蓮華を五百の金銭をもってかいとり、定光菩薩を七日七夜供養し給いき。女人あり、瞿夷となづく。二茎の蓮華をもって自ら供養して云わく「凡夫にてあらん時は、世々生々、夫婦とならん。仏にならん時は、同時に仏になるべし」。このちかいくちずして、九十一劫の間夫婦となる。結句、儒童菩薩は今の釈迦仏、昔の瞿夷は今の耶輸多羅女、今、法華経の勧持品にして具足千万光相如来これなり。
 悉達太子、檀特山に入り給いしには、金泥駒、帝釈の化身。摩騰迦・竺法蘭の経を漢土に渡せしには、十羅刹、化して白馬となり給う。この馬も法華経の道なれば、百二十年御さかえの後、霊山浄土へ乗り給うべき御馬なり。恐々謹言。
  建治三年丁丑三月二日    日蓮 花押
 兵衛志殿女房