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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

(171)

兄弟抄

 建治2年(ʼ76)4月 55歳 池上宗仲・池上宗長

 夫れ、法華経と申すは、八万法蔵の肝心、十二部経の骨髄なり。三世の諸仏はこの経を師として正覚を成じ、十方の仏陀は一乗を眼目として衆生を引導し給う。
 今、現に経蔵に入ってこれを見るに、後漢の永平より唐の末に至るまで渡れるところの一切経論に二本あり。いわゆる旧訳の経は五千四十八巻なり。新訳の経は七千三百九十九巻なり。彼の一切経は皆各々分々に随って我第一なりとなのれり。しかれども、法華経と彼の経々とを引き合わせてこれを見るに、勝劣天地なり、高下雲泥なり。彼の経々は衆星のごとく、法華経は月のごとし。彼の経々は灯炬・星月のごとく、法華経は大日輪のごとし。これは総なり。
 別して経文に入ってこれを見奉れば、二十の大事あり。第一第二の大事は、三千塵点劫・五百塵点劫と申す二つの法門なり。その三千塵点と申すは、第三の巻の化城喩品と申す処に出でて候。この三千大千世界を抹して塵となし、東方に向かって千の三千大千世界を過ぎて一塵を下し、また千の三千大千世界を過ぎて一塵を下し、かくのごとく三千大千世界の塵を下しはてぬ。さて、かえって下せる三千大千世界と下さざる三千大千世界をともにおしふさねてまた塵となし、この諸の塵をもってな