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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

んとすることありとも、物言うことなかれ」。烈士云わく「死すとも、物いわじ」。かくのごとくしてすでに夜中をすぎて、よまさにあけなんとす。いかんがおもいけん、あけんとする時、烈士おおきに声をあげてよばわる。すでに仙の法成ぜず。
 隠士、烈士に云わく「いかに約束をばたがうるぞ。くち惜しきことなり」と云う。烈士歎いて云わく「少し眠ってありつれば、昔仕えし主人自ら来って責めつれども、師の恩厚ければ、忍んで物いわず。彼の主人怒って頸をはねんと云う。しかれども、またものいわず。ついに頸を切りつ。中陰に趣く我が屍を見れば、惜しく歎かし。しかれども、物いわず。ついに南印度の婆羅門の家に生まれぬ。入胎・出胎するに、大苦忍びがたし。しかれども、息を出ださず。また物いわず。すでに冠者となりて妻をとつぎぬ。また親死しぬ。また子をもうけたり。かなしくもあり、よろこばしくもあれども、物いわず。かくのごとくして年六十有五になりぬ。我が妻かたりて云わく『汝もし物いわずば、汝がいとおしみの子を殺さん』と云う。時に我思わく『我すでに年衰えぬ。この子をもし殺されなば、また子をもうけがたし』と思いつるほどに、声をおこすとおもえば、おどろきぬ」と云いければ、師が云わく「力及ばず。我も汝も魔にたぼらかされぬ。終にこのこと成ぜず」と云いければ、烈士大いに歎きけり。「我心よわくして師の仙の法を成ぜず」と云いければ、隠士が云わく「我が失なり。兼ねて誡めざりけることを」と悔ゆ。しかれども、烈士、師の恩を報ぜざりけることを歎いて、ついに思い死ににししぬとかかれて候。
 仙の法と申すは、漢土には儒家より出で、月氏には外道の法の一分なり。云うにかい無き仏教の小