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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

ごとくたがいにろんじて、三箇年が間、位に王おわせざりき。万民のなげきいうばかりなし。天下のさいにてありしほどに、宇治王子云わく「我いきて有るゆえに、あに位に即かせ給わず」といって死なせ給いにき。仁徳これをなげかせ給いて、またふししずませ給いしかば、宇治王子いきかえりて、ようようにおおせおかせ給いて、またひきいらせ給いぬ。さて、仁徳、位につかせ給いたりしかば、国おだやかなる上、しんら・はくさい・こうらいも日本国にしたがいて、ねんぐ八十そうそなえけるとこそみえて候え。
 賢王のなかにも兄弟おだやかならぬれいもあるぞかし。いかなるちぎりにて兄弟かくはおわするぞ。浄蔵・浄眼の二人の太子の生まれかわりておわするか、薬王・薬上の二人か。大夫志殿の御おやの御勘気はうけたまわりしかども、ひょうえの志殿のことは今度はよもあににはつかせ給わじ。さるにては、いよいよ大夫志殿のおやの御不審は、おぼろけにてはゆりじなんどおもいて候えば、このわらわ〈鶴王〉の申し候はまことにてや。「御同心」と申し候えば、あまりのふしぎさに別の御文をまいらせ候。未来までのものがたり、なに事かこれにすぎ候べき。
 西域と申す文にかきて候は、月氏に婆羅痆斯国施鹿林と申すところに一りの隠士あり。仙の法を成ぜんとおもう。すでに瓦礫を変じて宝となし、人畜の形をかえけれども、いまだ風雲にのって仙宮にはあそばざりけり。このことを成ぜんがために、一りの烈士をかたらい、長刀をもたせて壇の隅に立てて、息をかくし、言をたつ。よいよりあしたにいたるまでものいわずば、仙の法成ずべし。仙を求むる隠士は、壇の中に坐して、手に長刀をとって口に神呪をずうす。約束して云わく「たとい死な