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は猪鹿に交え、あるいは魚鳥に切り雑え、あるいはたたき加え、あるいはすしとして売る。食する者数を知らず。皆、天に捨てられ、守護の善神に放されたるが故なり。結句は、この国他国より責められ、自国どし打ちして、この国変じて無間地獄と成るべし。
日蓮、この大いなる失を兼ねて見し故に、与同罪の失を脱れんがため、仏の呵責を思うが故に、知恩・報恩のため、国の恩を報ぜんと思って、国主ならびに一切衆生に告げ知らしめしなり。
不殺生戒と申すは一切の諸戒の中の第一なり。五戒の初めにも不殺生戒、八戒・十戒・二百五十戒・五百戒・梵網の十重禁戒・華厳の十無尽戒・瓔珞経の十戒等の初めには皆、不殺生戒なり。儒家の三千の禁めの中にも大辟こそ第一にて候え。その故は「三千界に遍満するも、身命に直するもの有ることなし」と申して、三千世界に満つる珍宝なれども、命に替わることはなし。蟻子を殺す者なお地獄に堕つ。いわんや魚鳥等をや。青草を切る者なお地獄に堕つ。いわんや死骸を切る者をや。かくのごとき重戒なれども、法華経の敵に成れば、これを害するは第一の功徳と説き給うなり。いわんや、供養を展ぶべけんや。
故に、仙予国王は五百人の法師を殺し、覚徳比丘は無量の謗法の者を殺し、阿育大王は十万八千の外道を殺し給いき。
これらの国王・比丘等は、閻浮第一の賢王、持戒第一の智者なり。仙予国王は釈迦仏、覚徳比丘は迦葉仏、阿育大王は得道の仁なり。今、日本国もまたかくのごとし。持戒・破戒・無戒、王臣・万民を論ぜず、一同の法華経誹謗の国なり。たとい身の皮をはぎて法華経を書き奉り、肉を積んで供養
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(170)秋元御書 | 弘安3年(’80)1月27日 | 59歳 | 秋元太郎 |