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一重、二・三・四・五重の輪現ず」。また経に云わく「二つの月並び出でん」と。今この国土に有らざるは、二つの日、二つの月等の大難なり。余の難は大体これ有り。今この亀鏡をもって日本国を浮かべ見るに、必ず法華経の大行者有るか。既にこれを謗る者に大罰有り。これを信ずる者、何ぞ大福無からん。
今、両人、微力を励まし、予が願に力を副え、仏の金言を試みよ。経文のごとくこれを行ぜんに徴無くんば、釈尊正直の経文、多宝証明の誠言、十方分身の諸仏の舌相、有言無実とならんか。提婆の大妄語に過ぎ、瞿伽利の大狂言に超えたらん。日月地に落ち、大地反覆し、天を仰いで声を発し、地に臥して胸を押さう。殷の湯王の玉体を薪に積み、戒日大王の竜顔を火に入れしも、今この時に当たるか。
もし、この書を見聞して宿習有らば、その心を発得すべし。使者にこの書を持たしめ、早々に北国に差し遣わし、金吾殿の返報を取って、速々是非を聞かしめよ。この願もし成ぜば、崑崙山の玉鮮やかなるは求めずして蔵に収まり、大海の宝珠は招かざるに掌に在らん。恐惶謹言。
下春十日 日蓮 花押
曽谷入道殿
大田金吾殿
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(162)曽谷入道殿許御書 | 文永12年(’75)3月10日* | 曽谷教信・大田乗明 |