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で大地を震わす。去ぬる正嘉元年の大地動、文永元年の大彗星、これらの災夭は、仏の滅後二千二百二十余年の間、月氏・漢土・日本の内にいまだ出現せざるところの大難なり。彼の弗舎蜜多羅王の五天の寺塔を焼失し、漢土の会昌天子の九国の僧尼を還俗せしめしに超過すること百千倍なり。大謗法の輩国中に充満し一天に弥るによって起こるところの夭災なり。
大般涅槃経に云わく「末法に入って不孝・謗法の者、大地微塵のごとし」取意。法滅尽経に「法滅尽の時は、狗犬の僧尼、恒河沙のごとし」等云々〈取意〉。今、親りこの国を見聞するに、人ごとにこの二つの悪有り。これらの大悪の輩は、いかなる秘術をもってこれを扶救せん。
大覚世尊、仏眼をもって末法を鑑知し、この逆・謗の二罪を対治せしめんがために、一大秘法を留め置きたもう。いわゆる、法華経本門久成の釈尊、宝浄世界の多宝仏、高さ五百由旬・広さ二百五十由旬の大宝塔の中において二仏座を並べしこと、あたかも日月のごとく、十方分身の諸仏は、高さ五百由旬の宝樹の下に五由旬の師子の座を並べ敷き、衆星のごとく四百万億那由他の大地に列坐したもう。三仏の二会に充満したもうの儀式は、華厳寂場の華蔵世界にも勝れ、真言両界の千二百余尊にも超えたり。一切世間眼は、この大会において、六難九易を挙げて法華経を流通せんと諸の大菩薩を諫暁せしむ。金色世界の文殊師利、兜史多宮の弥勒菩薩、宝浄世界の智積菩薩、補陀落山の観世音菩薩等、頭陀第一の大迦葉、智慧第一の舎利弗等、三千世界を統領する無量の梵天、須弥の頂に居住する無辺の帝釈、一四天下を照耀せる阿僧祇の日月、十方の仏法を護持する恒沙の四天王、大地微塵の諸の竜王等、我にも我にもこの経を付嘱せられよと競い望みしかども、世尊すべてこれを許した
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(162)曽谷入道殿許御書 | 文永12年(’75)3月10日* | 曽谷教信・大田乗明 |