『日蓮大聖人御書全集　新版』全文検索

相宗西天より来れり。太宗皇帝これを用いるが故に、天台法華宗に帰依するの人漸く薄し。ここに就いて隙を得て、則天皇后の御宇に、先に破られし華厳また起こって、天台宗に勝れたるの由、これを称す。太宗より第八代玄宗皇帝の御宇に、真言始めて月氏より来れり。いわゆる、開元四年には善無畏三蔵の大日経・蘇悉地経、開元八年には金剛智・不空の両三蔵の金剛頂経、かくのごとく三経を天竺より漢土に持ち来り、天台の釈を見聞して智発して、釈を作って大日経と法華経とを一経となし、その上に印・真言を加えて密教勝るるの由を号し、結句、権経をもって実経を下す。漢土の学者このことを知らず。
　像法の末八百年に相当たって、伝教大師、和国に託生して、華厳宗等の六宗の邪義を糾明するのみにあらず、しかのみならず、南岳・天台もいまだ弘めたまわざる円頓戒壇を叡山に建立す。日本一州の学者、一人も残らず大師の門弟となる。ただし、天台と真言との勝劣と誑惑においては、知ってしかも分明ならず。詮ずるところ、末法に贈りたもうか。これらは、傍論たるの故に、しばらくこれを置く。吾が師・伝教大師、三国にいまだ弘まらざるの円頓の大戒壇をば叡山に建立したもう。これひとえに、上薬を持ち用いて衆生の重病を治せんとせる、これなり。
　今、末法に入って二百二十余年、五濁強盛にして三災しきりに起こり、衆・見の二濁国中に充満し、逆・謗の二輩四海に散在す。専ら一闡提の輩を仰いで棟梁と恃怙し、謗法の者を尊重して国師となす。孔丘の孝経これを提げて父母の頭を打ち、釈尊の法華経を口に誦しながら教主に違背す。不孝国はこの国なり。勝母の閭、他境に求めず。故に、青天は眼を瞋らしてこの国を睨み、黄地は憤りを含ん