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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

彼の宗の学者、これを存ぜず。玄奘三蔵・慈恩大師は五性の邪義を廃して一乗の法に移る。法相の学者、堅くこれを諍う。
 問うて曰わく、その証、いかん。
 答えて曰わく、あるいは心を移して身を移さず、あるいは身を移して心を移さず、あるいは身心共に移し、あるいは身心共に移さず。その証文は別紙にこれを出だすべし。この消息の詮にあらざれば、これを出ださず。
 仏の滅後に三時有り。いわゆる正法一千年。前の五百年には、迦葉・阿難・商那和修・末田地・脇比丘等、一向に小乗の薬をもって衆生の軽病を対治す。四阿含経と十誦・八十誦等の諸律と相続解脱経等の三蔵を弘通して、後には律宗・俱舎宗・成実宗と号する、これなり。後の五百年には、馬鳴菩薩・竜樹菩薩・提婆菩薩・無著菩薩・天親菩薩等の諸の大論師、初めには諸の小聖の弘めしところの小乗経これに通達し、後には一々に彼の義を破失し了わって、諸の大乗経を弘通す。これまた中薬をもって衆生の中病を対治す。いわゆる華厳経・般若経・大日経・深密経等、三輪宗・法相宗・真言陀羅尼・禅法等なり。
 問うて曰わく、迦葉・阿難等の諸の小聖、何ぞ大乗経を弘めざるや。
 答えて曰わく、一には自身堪えざるが故に、二には所被の機無きが故に、三には仏より譲り与えられざるが故に、四には時来らざるが故なり。
 問うて曰わく、竜樹・天親等、何ぞ一乗経を弘めざるや。