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この三大秘法は、二千余年の当初、地涌千界の上首として日蓮たしかに教主・大覚世尊より口決せし相承なり。今、日蓮が所行は、霊鷲山の稟承に介爾ばかりの相違なき、色も替わらぬ寿量品の事の三大事なり。
問う。一念三千の正しき証文いかん。
答う。次に申し出だすべし。ここにおいて二種有り。方便品に云わく「諸法の実相とは、いわゆる諸法の、如是相乃至衆生をして仏知見を開かしめんと欲す」等云々。底下の凡夫理性所具の一念三千か。寿量品に云わく「しかるに、我は実に成仏してより已来、無量無辺なり」等云々。大覚世尊久遠実成の当初証得の一念三千なり。今、日蓮が時に感じて、この法門広宣流布するなり。
予、年来己心に秘すといえども、この法門を書き付けて留め置かずんば、門家の遺弟等、定めて無慈悲の讒言を加うべし。その後は何と悔ゆとも叶うまじきと存ずるあいだ、貴辺に対し書き送り候。一見の後、秘して他見有るべからず。口外も詮無し。法華経を諸仏出世の一大事と説かせ給いて候は、この三大秘法を含みたる経にてわたらせ給えばなり。秘すべし、秘すべし。
卯月八日 日蓮 花押
大田金吾殿御返事
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(160)三大秘法稟承事(三大秘法抄) | 弘安4年(’81)4月8日 | 60歳 | 大田乗明 |