『日蓮大聖人御書全集　新版』全文検索

「天竺の大論すら、なおその類いにあらず。真丹の人師、何ぞ労わしく語るに及ばん。これは誇耀にあらず。法相のしからしむるのみ」等云々。従義法師、重ねて讃めて云わく「竜樹・天親、いまだ天台にしかず」。伝教大師、自讃して云わく「天台法華宗の諸宗に勝るることは、所依の経に拠るが故に、自讃毀他ならず。庶わくは、有智の君子、経を尋ねて宗を定めよ」云々。また云わく「能く法華を持つ者もまた衆生の中に第一なり。すでに仏説に拠る。あに自歎ならんや」云々。
　今、愚見をもってこれを勘うるに、善無畏・弘法・慈覚・智証等は皆、仏意に違うのみにあらず、あるいは法の盗人、あるいは伝教大師に逆らえる僻人なり。故に、あるいは閻魔王の責めを蒙り、あるいは墓墳無く、あるいは事を入定に寄せ、あるいは度々大火・大兵に値えり。「権者は恥辱を死骸に与えず」の本文に違するか。
　疑って云わく、六宗のごとく真言の一宗も天台に落ちたる状、これ有りや。
　答う。記の十の末にこれを載せたり。したがって、伝教大師、依憑集を造ってこれを集む。眼有らん者は開いてこれを見よ。冀わしきかな、末代の学者、妙楽・伝教の聖言に随って、善無畏・慈覚の凡言を用いることなかれ。予が門家等、深くこの由を存せよ。今生に人を恐れて、後生に悪果を招くことなかれ。恐惶謹言。
　　正月二十四日　　　　日蓮　花押
　大田金吾入道殿