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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

 問うて云わく、日本国に、この疫病、先代に有りや。
 答えて云わく、日本国は神武天皇よりは十代にあたらせ給いし崇神天皇の御代に疫病起こって、日本国やみ死ぬること半ばにすぐ。王、始めて天照太神等の神を国々に崇めしかば、疫病やみぬ。故に崇神天皇と申す。これは仏法のいまだわたらざりし時のことなり。人王第三十代ならびに一・二の三代の国主、ならびに臣下等、疱瘡と疫病に御崩去等なりき。その時は神にいのれども叶わざりき。
 去ぬる人王第三十代欽明天皇の御宇に、百済国より経・論・僧等をわたすのみならず、金銅の教主釈尊を渡し奉る。蘇我宿禰等、「崇むべし」と申す。物部大連等の諸臣ならびに万民等は、一同に「この仏は崇むべからず。もし崇むるならば、必ず我が国の神、瞋りをなして、国やぶれなん」と申す。王は両方弁えがたくおわせしに、三災七難、先代に超えて起こって、万民皆疫死す。大連等便りをえて奏聞せしかば、僧尼等をはじに及ぼすのみならず、金銅の釈迦仏をすみをおこして焼き奉る。寺また同じ。その時に大連やみ死ぬ。王も隠れさせ給い、仏をあがめし蘇我宿禰もやみぬ。
 大連が子・守屋大臣云わく「この仏をあがむる故に、三代の国主すでにやみかくれさせ給う。我が父もやみ死ぬ。まさに知るべし、仏をあがむる聖徳太子・馬子等はおやのかたき、公の御かたきなり」と申せしかば、穴部王子・宅部王子等ならびに諸臣已下数千人、一同によりきして、仏と堂等をやきはらうのみならず、合戦すでに起こりぬ。結句は守屋討たれ了わんぬ。仏法渡って三十五年が間、年々に三災七難・疫病起こりしが、守屋、馬子に討たるるのみならず、神もすでに仏にまけしかば、災難たちまちに止み了わんぬ。