SOKAnetトップ

『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

(130)

可延定業書

 文永12年(ʼ75) 54歳 富木尼

 夫れ、病に二つあり。一には軽病、二には重病。重病すら、善医に値って急やかに対治すれば、命なお存す。いかにいわんや軽病をや。業に二つあり。一には定業、二には不定業。定業すら、能く能く懺悔すれば、必ず消滅す。いかにいわんや不定業をや。
 法華経第七に云わく「この経は則ちこれ閻浮提の人の病の良薬なり」等云々。この経文は法華経の文なり。一代の聖教は皆、如来の金言、無量劫より已来、不妄語の言なり。なかんずく、この法華経は、仏の「正直に方便を捨つ」と申して、真実が中の真実なり。多宝は証明を加え、諸仏は舌相を添え給う。いかでかむなしかるべき。その上、最第一の秘事はんべり。この経文は「後の五百歳、二千五百余年の時、女人の病あらん」ととかれて候文なり。
 阿闍世王は御年五十の二月十五日に、大悪瘡、身に出来せり。大医・耆婆が力も及ばず、三月七日、必ず死して無間大城に堕つべかりき。五十余年が間の大楽一時に滅して、一生の大苦、三七日にあつまれり。定業限りありしかども、仏、法華経をかさねて演説して、涅槃経となづけて大王にあたえ給いしかば、身の病、たちまちに平愈し、心の重罪も一時に露と消えにき。仏の滅後一千五百余年、陳