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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

の比丘、仏に云わく「仏は、この三界の中、第一の特尊なり。一切衆生の眼目にておわす。たとい十方世界を覆う衣なりとも、大地にしく袈裟なりとも、能く報じ給うべし。我が母は無智なること、牛のごとし、羊よりもはかなし。いかでか袈裟の信施をほうぜん」と云々。仏、返して告げて云わく「汝が身をば誰か生みしぞや。汝が母、これを生む。この袈裟の恩、報じぬべし」等云々。
 これはまた、齢九旬にいたれる悲母の、愛子にこれをまいらせさせ給う。しかも我と老眼をしぼり、身命を尽くせり。「我、子の身としてこの帷の恩かたし」とおぼしてつかわせるか。日蓮、また、ほうじがたし。しかれども、また、返すべきにあらず。この帷をきて、日天の御前にしてこの子細を申し上ぐれば、定めて釈梵諸天しろしめすべし。帷は一つなれども、十方の諸天これをしり給うべし。露を大海によせ、土を大地に加うるがごとし。生々に失せじ。世々にくちざらんかし。恐々謹言。
  二月七日    日蓮 花押