SOKAnetトップ

『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

 ときどの
  けかち申すばかりなし。八木一合もうらず。がししぬべし。この御房たちもみなかえして、ただ一人候べし。このよしを御房たちにもかたらせ給え。

(129)

富木殿御返事(悲母の帷の事)

 文永12年(ʼ75)2月7日 54歳 富木常忍

 富木殿御返事    日蓮

 帷一領、給び候い了わんぬ。
 夫れ、仏弟子の中、比丘一人はんべり。飢饉の世に、仏の御時事かけて候いければ、比丘、袈裟をうってそのあたいを仏に奉る。仏、その由来を問い給いければ、しかじかと、ありのままに申しけり。仏云わく「袈裟はこれ三世の諸仏の解脱の法衣なり。このあたいをば我ほうじがたし」と辞退しましまししかば、この比丘申さく「さて、この袈裟あたいをばいかんがせん」と申しければ、仏云わく「汝、悲母有りや不や」。答えて云わく「有り」。仏云わく「この袈裟をば、汝、母に供養すべし」。こ