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の五字、これを残したもう。詮ずるところ、一には、仏、授与したまわざるが故に、二には、時と機といまだ熟せざるが故なり。今、既に時来れり。四菩薩出現したまわんか。日蓮、このことまずこれを知りぬ。西王母の先相には青鳥、客人の来相には鳱鵲、これなり。各々我が弟子たらん者は深くこの由を存ぜよ。たとい身命に及ぶとも退転することなかれ。
富木、三郎左衛門尉、河野辺等、大和阿闍梨等、殿原・御房たち、各々互いに読み聞かせまいらせさせ給え。かかる濁世には、互いにつねにいいあわせて、ひまもなく後世ねがわせ給い候え。
(128)
富木殿御書(身延入山の事)
文永11年(ʼ74)5月17日 53歳 富木常忍
十二日さかわ、十三日たけのした、十四日くるまがえし、十五日おおみや、十六日なんぶ、十七日このところ。いまださだまらずといえども、たいしは、この山中、心中に叶って候えば、しばらくは候わんずらん。結句は一人になって日本国に流浪すべきみにて候。またたちとどまるみならば、げんざんに入り候べし。恐々謹言。
十七日 日蓮 花押
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(127)法華行者逢難事 | 文永11年(’74)1月14日 | 53歳 | 門下一同 |
(128)富木殿御書(身延入山の事) | 文永11年(’74)5月17日 | 53歳 | 富木常忍 |