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答えて云わく、地獄は一百三十六あり。一百三十五の地獄へは、堕つる人、雨のごとし。その因やすきゆえなり。一つの無間大城へは、堕つる人かたし。五逆罪を造る人まれなるゆえなり。また仏前には五逆なし。ただ殺父・殺母の二逆ばかりあり。また二逆の中にも、仏前の殺父・殺母は決定として無間地獄へは堕ちがたし。畜生の二逆のごとし。しかるに、今、日本国の人々は、また一百三十五の地獄へはゆきがたし。日本国の人々、形はことなれども、同じく法華経誹謗の輩なり。日本国異なれども同じく法華誹謗の者となることは、源、伝教より外の三大師の義より事おこれり。
問うて云わく、三大師の義、いかん。
答えて云わく、弘法等の三大師は、その義ことなれども、同じく法華経誹謗は一同なり。いわゆる、善無畏三蔵・金剛智三蔵・不空三蔵の法華経誹謗の邪義なり。
問うて云わく、三大師の地獄へ堕つる証拠、いかん。
答えて云わく、善無畏三蔵は漢土・日本国の真言宗の元祖なり。彼の人すでに頓死して閻魔のせめにあえり。そのせめに値うことは他の失ならず、法華経は大日経に劣ると立てしゆえなり。しかるを、この失を知らずしてその義をひろめたる慈覚・智証、地獄を脱るべしや。ただ善無畏三蔵の閻魔のせめにあずかりし故をだにもたずねあきらめば、このこと自然に顕れぬべし。善無畏三蔵の鉄の縄七すじつきたることは、大日経の疏に我とかかれて候上、日本の醍醐の閻魔堂、相州鎌倉の閻魔堂にあらわせり。これをもって慈覚・智証等の失をば知るべし。
問うて云わく、法華経と大日の三部経の勝劣は、経文いかん。
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(109)破良観等御書 | 建治2年(’76) | 55歳 | 弥四郎〈光日尼子息〉の縁者 |