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いはかんどうをなすことかずをしらず。上に奏すれども、人の主となる人は、さすが戒力といい、福田と申し、子細あるべきかとおもいて左右なく失にもなされざりしかば、きりものどもよりあいて、まちゅうど等をかたらいて、数万人の者をもって夜中におしよせ失わんとせしほどに、十羅刹の御計らいにてやありけん、日蓮その難を脱れしかば、両国の吏、心をあわせたることなれば、殺されぬをとがにして伊豆国へながされぬ。最明寺殿ばかりこそ、子細あるかとおもわれて、いそぎゆるされぬ。
さりしほどに、最明寺入道殿隠れさせ給いしかば、いかにもこのことあしくなりなんず、いそぎかくるべき世なりとはおもいしかども、これにつけても、法華経のかとうどつよくせば一定事いで来るならば身命をすつるにてこそあらめと思い切りしかば、讒奏の人々いよいよかずをしらず。上下万人、皆、父母のかたき・とわりをみるがごとし。不軽菩薩の威音王仏のすえにすこしもたがうことなし。
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(109)破良観等御書 | 建治2年(’76) | 55歳 | 弥四郎〈光日尼子息〉の縁者 |