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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

鹿は胎内の子をおしみて王の前にまいれり。いかにいおうや、心あらん人においてをや。されば、王陵が母は子のためになずきをくだき、神尭皇帝の后は胎内の太子の御ために腹をやぶらせ給いき。これらをおもいつづけさせ給わんには「火にも入り、頭をもわりて、我が子の形をみるべきならばおしからず」とこそおぼすらめとおもいやられて、なみだもとどまらず。
 また、御消息に云わく「人をもころしたりし者なれば、いかようなるところにか生まれて候らん。おおせをかぼり候わん」と云々。
 夫れ、針は水にしずむ。雨は空にとどまらず。蟻子を殺せる者は地獄に入り、死にかばねを切れる者は悪道をまぬかれず。いかにいわんや、人身をうけたる者をころせる人をや。ただし、大石も海にうかぶ。船の力なり。大火もきゆること、水の用にあらずや。小罪なれども懺悔せざれば悪道をまぬかれず、大逆なれども懺悔すれば罪きえぬ。
 いわゆる、粟をつみたりし比丘は五百生が間牛となる。菰をつみし者は三悪道に堕ちにき。羅摩王・抜提王・毘楼真王・那睺沙王・迦帝王・毘舎佉王・月光王・光明王・日光王・愛王・持多人王等の八万余人の諸王は皆、父を殺して位につく。善知識にあわざれば、罪きえずして阿鼻地獄に入りにき。
 波羅奈城に悪人あり。その名をば阿逸多という。母をあいせしゆえに、父を殺し、妻とせり。父が師の阿羅漢ありて教訓せしかば、阿らかんを殺す。母また他の夫にとつぎしかば、また母をも殺しつ。つぶさに三逆罪をつくりしかば、隣里の人うとみしかば、一身たもちがたくして祇園精舎にゆいて出家をもとめしに、諸僧許さざりしかば、悪心強盛にして多くの僧坊をやきぬ。しかれども、釈尊に値