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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

い奉って、出家をゆるし給いにき。
 北天竺に城あり。細石となづく。彼の城に王あり。竜印という。父を殺してありしかども、後にこれをおそれて、彼の国をすてて仏にまいりたりしかば、仏、懺悔を許し給いき。
 阿闍世王はひととなり三毒熾盛なり。十悪ひまなし。その上、父をころし、母を害せんとし、提婆達多を師として無量の仏弟子を殺しぬ。悪逆のつもりに、二月十五日、仏の御入滅の日にあたりて、無間地獄の先相に七処に悪瘡出生して、玉体しずかならず。大火の身をやくがごとく、熱湯をくみかくるがごとくなりしに、六大臣まいりて、六師外道を召されて悪瘡を治すべきよう申しき。今の日本国の人々の、禅師・律師・念仏者・真言師等を善知識とたのみて蒙古国を調伏し、後生をたすからんとおもうがごとし。その上、提婆達多は阿闍世王の本師なり。外道の六万蔵、仏法の八万蔵をそらにして、世間・出世のあきらかなること、日月と明鏡とに向かうがごとし。今の世の天台宗の碩学の顕密二道を胸にうかべ、一切経をそらんぜしがごとし。これらの人々、諸の大臣、阿闍世王を教訓せしかば、仏に帰依し奉ることなかりしほどに、摩竭提に天変度々かさなり、地夭しきりなる上、大風・大旱ばつ・飢饉・疫癘ひまなき上、他国よりせめられて、すでにこうとみえしに、悪瘡すら身に出でしかば、国土一時にほろびぬとみえしほどに、にわかに仏前にまいり、懺悔して罪きえしなり。
 これらはさておき候いぬ。人のおやは悪人なれども、子善人なれば、おやの罪ゆるすことあり。また子悪人なれども、親善人なれば、子の罪ゆるさるることあり。されば、故弥四郎殿はたとい悪人なりとも、うめる母、釈迦仏の御宝前にして昼夜なげきとぶらわば、いかでか彼の人うかばざるべき。