『日蓮大聖人御書全集　新版』全文検索

　そもそも、この流罪の身になりて候につけて、二つの大事あり。
　一には大いなる悦びあり。その故は、この世界をば娑婆と名づく。娑婆と申すは忍と申すことなり。故に、仏をば能忍と名づけたてまつる。この娑婆世界の内に、百億の須弥山、百億の日月、百億の四州あり。その中の中央の須弥山・日月・四州に仏は世に出でてまします。この日本国は、その仏の世に出でてまします国よりは丑寅の角にあたりたる小島なり。
　この娑婆世界より外の十方の国土は、皆浄土にて候えば、人の心もやわらかに、賢聖をのり悪むことも候わず。この国土は、十方の浄土にすてはてられて候十悪五逆、賢聖を誹謗する、父母に孝せざる、沙門を敬わざる等の科の衆生が、三悪道に堕ちて無量劫を経て、還ってこの世界に生まれて候が、先生の悪業の習気失せずして、ややもすれば十悪五逆を作り、賢聖をのり、父母に孝せず、沙門をも敬わず候なり。
　故に、釈迦如来、世に出でてましませしかば、あるいは毒薬を食に雑えて奉り、あるいは刀杖・悪象・師子・悪牛・悪狗等の方便をもって害し奉らんとし、あるいは女人を犯すと云い、あるいは卑