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法華経と申す御経は別のことも候わず。「我は過去五百塵点劫より先の仏なり。また舎利弗等は未来に仏になるべし」と。「これを信ぜざらん者は無間地獄に堕つべし。我のみこう申すにはあらず。多宝仏も証明し、十方の諸仏も舌をいだしてこう候。地涌千界・文殊・観音・梵天・帝釈・日月・四天・十羅刹、法華経の行者を守護し給わん」と説かれたり。されば、仏になる道は別のようなし。過去の事、未来の事を申しあてて候が、まことの法華経にては候なり。
日蓮は、いまだつくしを見ず、えぞしらず。一切経をもって勘えて候えば、すでに値いぬ。もししからば、「各々不知恩の人なれば、無間地獄に堕ち給うべし」と申し候は、たがい候べきか。今はよし、後をごらんぜよ。日本国は当時のゆき・対馬のようになり候わんずるなり。その時、安房国にむこが寄せて責め候わん時、「日蓮房の申せし事の合うたり」と申すは、偏執の法師等が口すくめて無間地獄に堕ちんこと、不便なり、不便なり。
正月十一日 日蓮 花押
安房国清澄寺大衆中
このふみは、さど殿と、すけあざり御房と、虚空蔵の御前にして、大衆ごとによみきかせ給え。
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(102)清澄寺大衆中 | 建治2年(’76)1月11日 | 55歳 | 清澄寺知友 |