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妙〈涅槃〉法〈般若〉蓮〈方等〉華〈阿含〉経〈華厳〉、已上、妙法蓮華経の五字には、十界三千の宝珠あり。三世の諸仏は、この五字の蔵の中より、あるいは華厳の宝を取り出だし、あるいは阿含・方等・般若の宝を取り出だし、種々説法したまえり。しかのみならず、論師・人師等の疏釈も、ことごとくこの五字の中より取り出だして一切衆生に与えたまえり。
これらは皆、五字の中より取り出だしたまえども、妙法蓮華経の袋をば持ちたまわず。詮ずるところ、五字は上行菩薩の付嘱にして、さらに迹化の菩薩・諸論師いろわざる題目なり。よって、上行所伝の南無妙法蓮華経は蔵なり、金剛不壊の袋なり。この袋をそのまま日本国の一切衆生には与えたまえり。信心をもってこの財宝を受け取るべきなり。今、末法に入っては、日蓮等の類い、受け取るところの如意宝珠なり云々。
一、我ら衆生の成仏は打ちかためたる成仏という証文の事
仰せに云わく、経に云わく「無上宝聚 不求自得(無上の宝聚は、求めざるに自ずから得たり)」の文これなり。我ら凡夫即極と、はたと打ちかためたる成仏なり。いわゆる不求自得するところの南無妙法蓮華経なればなり云々。
一、爾前・法華の能くらべの事
仰せに云わく、爾前の経にして十悪・五逆等の成仏の能なし。今、法華経に、十界皆成、分明なり。爾前の経の無能という証文とは、方便品に云わく「但以仮名字 引導於衆生(ただ仮の名字をもって、衆生を引導したもうのみ)」の文これなり。さて、法華経は能という証文は、「諸法実相」の文これ
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(096)御講聞書 |