『日蓮大聖人御書全集　新版』全文検索

す。これは境界性を取るなり」。この釈の意は、浄名経の意ならば、我ら衆生の一日一夜に作すところの罪業、八億四千の念慮を起こす。余経の意は、皆三途の業因と説くなり。法華経の意は、この業因即ち仏ぞと明かせり。されば、「煩悩をもって如来の種子とす」と云うは、この義なり。この浄名経の文は、正しく「文は爾前に在るも、義は法華に在り」の意なり。この「境界性」というは、末師釈する時、「能く煩悩を生ずるを、『境界性』と名づく」と判ぜり。我ら衆生の眼耳等の六根に妄執を起こすなり。これを「境界性」と云うなり。権教の意は、この念慮を捨てよと説けり。法華経の心は、この「境界性」の外に三因仏性の種子なし、これ則ち三身円満の仏果を成ずべき種性なりと説けり。この種性を、権教を信ずる人はこれを知らず、この経を謗ずるが故に、凡夫即極の義をも知らず。故に一切世間の仏種を断ずるなり。されば、六道の衆生も三因仏性を具足して終に三身円満の尊容を顕すべきところに、この経を謗ずるが故に、六道の仏種をも断ずるなり。されば、妙楽大師云わく「この経はあまねく六道の仏種を開く。もしこの経を謗ぜば、義、断に当たるなり」。
　　詮ずるところ、日蓮が意は、「一切」の言は十界をさす。この経を謗ずるは、十界の仏種を断ずるなり。されば、「誹謗」の二字を大論に云わく「口に謗るを『誹』と言い、心に背くを『謗』と云う」。よって、色心三業に経て法華経を謗じ奉る人は「入阿鼻獄（阿鼻獄に入る）」、疑いなきなり。いわゆる弘法・慈覚・智証・善導・法然・達磨等の大謗法の者なり。今、日蓮等の類い、南無妙法蓮華経と唱え奉るは、あに三世の諸仏の仏種を継ぐ者にあらずや云々。