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我らが色心の二法を無常と説くは権教なり、常住と説くは法華経なり。無常と執する執情を滅するを、「即滅化城(即ち化城を滅す)」と云うなり。「化城」は皮肉、「宝処」は骨なり。色心の二法を妙法と開覚するを、化城即宝処の実体と云うなり。実体とは、無常と常住とは俱時に相即し、随縁・不変は、一念の寂・照なり。一念とは、南無妙法蓮華経無疑曰信の一念なり。即の一字、心を留めてこれを思うべし云々。
第二 「大通智勝仏」の事
御義口伝に云わく、「大通」は心王なり、「智勝」は心数なり。「大通」は迹門、「智勝」は本門なり。「大通智勝」は、我らが一身なり。今、日蓮等の類い、南無妙法蓮華経と唱え奉る者は、「大通」なり。題目を唱うるは、「智勝」なり。法華経の行者の智は権宗の大智よりも百千万倍勝れたるところを、「智勝」と心得べきなり。「大」は色法、「通」は心法なり。我らが生死を「大通」と云うなり。この生死の身心に振る舞う起念を、「智勝」とは云うなり。ここをもってこれを思うに、南無妙法蓮華経と唱え奉る行者は、「大通智勝仏」なり。「十六王子」とは、我らが心数なり云々。
第三 「諸母涕泣(諸母は涕泣す)」の事
御義口伝に云わく、「諸母」とは、「諸」は十六人の母ということなり。実義には、「母」とは、元品の無明なり。この無明より起こる惑障を「諸母」とも云うなり。流転の時は無明の母とつれて出で、還滅の時は無明の母を殺すなり。無明の母とは、念仏・禅・真言等の人々なり。「而随送之(しかして随ってこれを送る)」とは、謗人を指すなり。しかりといえども、終に法華経の広宣流布顕れて、
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(095)御義口伝 |