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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

(459)

産湯相承事

    日興これを記す。
 御名乗りのこと。始めは是生、実名は蓮長と申し奉る。後には日蓮と御名乗りある御事は、悲母・梅菊女〈童女の御名なり。平畠山殿の一類にて御座します云々〉、法号・妙蓮禅尼の御物語り御座しますことには、我に不思議の御夢想あり。清澄寺に通夜申したりし時、「汝が志、真に神妙なり。一閻浮提第一の宝を与えんと思うなり。東条の片海に三国太夫という者あり。これを夫と定めよ」云々。その歳の春三月二十四日の夜なり。正かに今も覚え侍るなり。
 我、父母に後れ奉って已後、詮方なく遊女のごとくなりし時、御身の父に嫁げり。ある夜の霊夢に曰わく、叡山の頂に腰をかけて、近江の湖水をもって手を洗って、富士の山より日輪の出でたもうを懐き奉ると思って打ち驚いて後、月水留まると夢物語を申し侍れば、父の太夫、「我も不思議なる御夢想を蒙るなり。虚空蔵菩薩、貌吉き児を御肩に立て給う。『この少人は、我がためには上行菩提薩埵なり。日の下の人のためには生財摩訶薩埵なり。また一切有情のためには、行く末、三世常恒の大導師なり。これを汝に与えん』とのたもうと見て後、御事懐妊の由を聞く」と語りあいたりき。さてこそ御事は聖人なれ。